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ヒンドゥ教における三大神とは、シヴァ、ビシュヌ、ブラフマーである。それぞれ、シヴァは破壊、ビシュヌは維持、ブラフマーは創造を司るとされている。

三大神が確立されたのはおそらく紀元前後のことだが、このうちブラフマーにたいする信仰は早い時期に衰退し、現在、ヒンドゥ教は大きく、シヴァ派とビシュヌ派に二分されている。

シヴァ派はシヴァとその家族、いわゆるシヴァファミリーによって構成される。シヴァの妻であるパールヴァティー、長男のガネーシャ、次男のカールッティケーヤ、従者のナンディが主要なメンバーとなっているが、女神パールヴァティの暗黒面、つまり破壊と死を象徴する姿として祭られるのが、ドゥルガー女神とカーリー女神である。ドゥルガーとカーリーは土地の大地母神が昇華した姿であろう。また、これら三つの女神以外にも、インドには多くの大地母神が存在するが、その多くはシヴァの神妃とされる。


月のない夜がシヴァの夜とされることに象徴されるように、シヴァは裏の世界を司る神である。つまり、人間社会の裏側である動物世界を束ねる神でもあり、生と死の「死」を司る神でもある。破壊と死を象徴するシヴァは一方で根源の力を司る神でもある。生あるものが滅び、また再生するといった輪廻転生のプロセスはシヴァとその神妃たちとの交合から生み出される。よってシヴァはこの世のエネルギーを象徴する神でもある。

ビシュヌ派はその神妃であるラクシュミーと、ビシュヌの10の化身、およびその周辺から構成されている。化身とは、それぞれ、マツヤ(魚)、クールマ(亀)、ヴィラーハ(猪)、ヴァーナマ(小人)、パラシュラーマ(斧を持つラーマ)、ラーマ、クリシュナ、ブッダ、カルキであるが、その構成メンバーの意図するところはよく分らない。関係のない神話等の寄せ集めかと疑われるが、このうち信仰の対象とされるのはラーマとクリシュナ、およびブッダ(少数派ではあるが…)にほぼ集約される。

ラーマは叙事詩「ラーマヤーナ」の主人公であり、ランカー島に連れ去られた妃であるシータを猿王ハヌマーンらとともに救い出す物語が中心となり、その物語を通して、愛、献身、正義といった思想が語られ、信者から熱烈に信仰される。

一方クリシュナは、幼少期あるいは青年期の自由奔放な活躍を描いた神話がインドに広く普及し、まさにアイドルさながらに熱狂的に支持されたが、思想的には、聖典「バガヴァットギーター」において、神(クリシュナ自身)にたいするバクティ(献身的な愛)を説き、一方で現世におけるそれぞれの義務を全うすることの大切さを強調し、それらの実践において解脱を目指す道を説くことで、インドの民衆宗教に大きな流れを開くにいたった。

ビシュヌ派の特徴は、これらラーマとクリシュナ、および輪廻からの解脱を説いたブッダによって決定付けられたと思われるが、肝心のビシュヌ自身はなお茫洋とした不可思議な世界にただよっており、それがまたヒンドゥー教に広がりを与えているように感じられる。

なお、シヴァ派とビシュヌ派は対立するものではなく、それぞれが夜と昼、 裏と表、自然と社会といった車の両輪の役割を果たしており、それぞれの信者もまた、異なった派の神に対して敬意を表し、礼拝するのが普通である。

三大神の一つであるブラフマーはすでに派を持つような存在ではなく、神妃であると同時にじつは娘でもあるサラスヴァティー(ストーカーのように付きまとって妻としたとされるが…)とともに静かに祭られるのみである。なお、ブラフマーの権威が失墜した決定的原因はシヴァによるブラフマー殺しにあるようだ。しかしシヴァはブラフマー殺しの罪をかぶり、苦行者の姿になり、その結果、破壊と死を象徴する神となったとされる。

ちなみに、シヴァはさらにブラフマーの息子であり、最初の妻サティの父親ダクシャをも殺している。ブラフマーやダクシャは正統派バラモンの擁する神であることから、シヴァはおそらく、二度にわたってバラモン殺しの大罪(最大の罪であった)を犯したことになる。その他、シヴァの乱暴振りを示す逸話は数多くあるが、それが逆に民衆の心をつかむことになり、ついに最高神の地位にまで登りつめることになった。

堅苦しく書いたが、このあたりの神話、とくにシヴァ派、さらにシヴァとビシュヌ、およびブラフマーの優劣を論じる神話などは、笑いなくして読めないようなドタバタ劇が数多い。

インド三大神の前、紀元前に繁栄したのは、いわゆるアーリア族(アーリアによるインド征服には異説あり)、つまり聖典ヴェーダがとくに信仰された時代の神であった。その中心はインドラであるが、後年、シヴァやビシュヌに主役の座を奪われ、その権威は完全に失墜してしまった。同時代の神のなかでは、火の神アグニと太陽の神スーリヤあたりが現在まで生き延びてきた。

アーリア以前となると、これは完全に想像の世界となってしまう。とはいえ、とくにシヴァファミリーを中心とした土着の神々のルーツは、じつは想像も出来ないほど古いものかもしれない。インダス文明の遺跡であるモヘンジョダロから、シヴァらしき姿の男が描かれた印章が出土しているが、その周囲を動物たちがとりまく様子は、まさしくシヴァそのものである。ただしシヴァという呼び名は紀元前後に一般化したものである。

インドは多くの自然神を持つ。アーリア起源のアグニやスーリヤもまた自然神であるが、さらに起源の古い自然神も存在している。なかでも川の女神は人々の生活に深く関与するものとして重要視された。ガンジス川巡礼の旅におけるガンガー女神をはじめ、ヤムナー、ナルマダ、ゴダヴァリなど、川の女神は数多く存在している。一方、険峻なヒマラヤの峰々はシヴァと関連が深いか、あるいはシヴァそのものとされる。ただし、食べ物の女神アンンアプルナなどの例外もある。川と山以外では、洞窟、巨岩、川と川の合流点などが、まさしく神そのものとして祭り上げられるか、あるいは聖地として人々の信仰を集めている。

動物神も数多い。シヴァが首や頭に巻く蛇の神様ナーガ、ビシュヌの乗り物であるガルーダ、シヴァの従者である雄牛のナンディーなど、その多くが主神に付き従うような形式をとっている。動物を意のままに操る古代シャーマニズムの伝統であろう。

(このテキストは個人的見解を含むものですので、その点をご了解ください)



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(当HP内、インド神様記事へのリンク集)

主要記事

殺戮の女神カーリー
ゾウの神様ガネーシャ伝説
シヴァという世界観
悪霊シヴァの起源
じつはインド最強ドゥルガー女神
水の女神サラスヴァティー
ダキニ(黒魔術の系譜)
猿の神様ハヌマーン
ナーガ(1)蛇神ナーガの系譜
ナーガ(2)蛇神ナーガと日本
宇宙の主ジャガンナート神
シヴァとビシュヌの子アイヤッパン
インドの神々(概要)

ページ内小さな記事
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破壊神シヴァの化身バイラヴァ
没落したインド三大神の一つブラフマー
大地母神チャームンダー
殺戮の女神ドゥルガー
天の川の女神ガンガー
鳥の神様ガルーダ
最強の神ハリハラ
生首を手にしたカーリー女神
鬼族の守護神クベーラ
マヒシャを殺す女神ドゥルガー
シヴァの息子にして軍神カールッティケーヤ
半獣半人の神ナラシンハ
猪顔の神ヴァラーハ
シヴァと並ぶ最強最大の神ビシュヌ
リンガ伝説

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