猿の神様ハヌマーン。風の神ヴァーユから生まれたハヌマーンは、怪力と勇気、忠誠心、そして不死の神様として、インドで強い人気を誇る。数年前には連続テレビドラマ化されて話題になった。また、東インド、ビハール州を中心とした北インド一帯で、その姿をいたるところで見ることが出来る。偶像化された神様としては、おそらくシヴァ、ガネーシャ、クリシュナと並ぶほどの人気がある。
神話の上でハヌマーンが活躍するのは、インド二大叙事詩の一つ「ラーマヤーナ」においてである。そこでハヌマーンは、主人公であるラーマ王子の家来として、魔王ラーヴァナによってランカー島に連れ去られたラーマの妻シータを取り戻すため、獅子奮迅の活躍を見せる。
ランカー島に潜入して一度捕虜となったハヌマーンは、その長い尻尾に火をつけられるが、これを振り回して暴れたため、島中が火の海になった。ハヌマーンは自分の体の大きさを自由自在に変化させることが出来たのだ。
また、ラーマの弟ラクシュマナが怪我を負ったときは、ヒマラヤ、カイラーサ山に飛行して薬草を探すが、なかなか見つけられず、業を煮やしたハヌマーンは、その怪力を使って山ごと引っこ抜き、ラクシュマナのもとへと運んだ。
その後、再びランカー島に潜入したハヌマーンの活躍もあり、シータは無事救出されることになる。ハヌマーンはこの活躍によって不死の力を獲得し、インドでもっとも有名な神様の一つとして生きながらえることになる。
ハヌマーンを中心とした「ラーマヤーナ」の物語は東南アジアなどの周辺国にまで伝えられた。また、三蔵法師を守って天竺を目指した孫悟空のルーツをハヌマーンに求める説もある。「きんとうん」に乗って、空を自在に駆け回る孫悟空の姿は、風の神ヴァーユの流れを汲むハヌマーンの活躍を彷彿とされるものがある。
ところで、ハヌマーンがシータを救出するため潜入したランカー島は、現在のスリランカとされている。 ただし異説もある。たとえば、ランカー島、インドネシア説である。
(下の写真は、ラーマへの忠誠を誓うハヌマーン。自らの胸を切り裂き、中のラーマとシータの像を示した、という伝説を描いたもの。ラーマとシータの像は鮮明には見えないが…)
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