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美しき女神ドゥルガーの秘密…

じつはインド最強ドゥルガー女神

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インド最強の神といえばやはりシヴァ。戦争の神でもあり、また破壊の神でもある。とはいえ、シヴァも伝説の中では結構苦戦している。息子のガネーシャ(まだゾウ顔になる以前…)が反抗したときでさえビシュヌの援護を借りている。さらに嫁さんのカーリーにはなぜか踏みつけにされている(?)。しかし、これは身内の話。

(シヴァについては以下のページを参照)
http://chaichai.campur.com/indozatugaku/siva.html

インドの神々は太古の昔から悪鬼(魔神)たちに苦しめられてきた。そこで「悪鬼たちの親玉」シヴァのような神様が紀元前後から台頭してきたわけだが、悪鬼たちは降って湧くように登場してくる。

アスラ(魔神)の主であるマヒシャが手下を引き連れ暴れたときも神々は苦戦した。インドラをはじめとする古い権威的な神々が天界から追われるような事態となり、彼らはシヴァやビシュヌといった新興の神たちに援助を求めた。要請を受けてやってきたシヴァやビシュヌであったが、アスラの軍団は非常に手ごわい。

そこでシヴァやビシュヌといった神々がそれぞれ光を放ち、それらの力を合体させることによって一つの美しい女神を生み出した。それが当ページの主役ドゥルガー女神である。

神々は女神に対して数多くの武器を与えた。シヴァの三叉槍、クリシュナの円盤、ヴァルナの法螺貝(ほらがい)などである。さらにヒマヴァットというヒマラヤの神は、乗り物として女神にライオンを与えた(インドのいたるところにライオンがいた時代があった。今も西の果てに少し生息している)。


こうして最強の神となったドゥルガーは、次々とアスラ(魔神)たちを殺戮して、最後は シヴァの三叉戟でマヒシャを串刺しにした。それが上の写真である。

ドゥルガーはさらに山中奥深く、デカン高原のヴィンディヤ山脈までアスラたちを追いかけ、アスラの王を殺戮する。この王の名前がじつはドゥルガーであり、女神はこの名前を自分のものとして、このときからドゥルガーを名乗ることになったという。

以上がドゥルガー伝説の概要となる。つまり表の歴史である。そして当然、裏がある。というのは、ドゥルガーは、もともとデカン高原ヴィンディヤ山脈に住む土俗神であった。




ヴィンディヤ山脈は、北インドと南インドを隔てて東西に連なる山脈である。その山脈の、どの辺りがドゥルガーの出身地かはよく分からないが、いずれにしてもこの地は、インド先住民の本拠地である。山中の村の多くが先住民のものであり、山脈周辺部に今なお数千万人の先住民が暮らしている。

ドゥルガーはこうした先住民の手によって祭られ、酒や肉、ことに野獣たちの生贄を求める血なまぐさい処女神であったとされている。伝説に登場するアスラ(魔神)たちもまた、おそらくは先住民の王とその手下であったのだろう。

ヴィンディヤ山脈は個人的に非常に思い入れの強い土地である。その中央部にパチマリという聖地(現在は避暑地でもある。上の写真)があり、二度訪れ、強い衝撃を受けたという経験がある。

パチマリは、密生する木々が生い茂るジャングル、野生動物、太古の壁画、洞窟聖地などがおりなす非常に神秘的な土地である。周辺には先住民の村が点在し、また、彼らが世界の中心として崇めるチョーラガルという山がパチマリの中心にそびえたつ。

(パチマリ一回目の旅については以下のページを参照)
http://chaichai.campur.com/pachimari/pachimari01.htm

この地を二週間にわたって歩くうちに、ひょっとすると、この地こそがインドの中心なのではないか、というインスピレーションが湧き起こったほどだ。ドゥルガーとパチマリの関連は不明だが、いずれにしても、ドゥルガーはヴィンディヤ山脈の太古の森から生み出された。その背景には、暗い闇で行われていた土俗的なシャーマニズムの世界が横たわる。

ドゥルガーは現在シヴァの神妃とされている。
その経緯についてはよく言われているところだが、簡単に説明しておきたい。

紀元前後から勢力を拡大したシヴァ(シヴァ派)は、各地の女神たちを自分の神妃とすることで女神を祭る先住民を取り込み、その地位を確立していった。

神妃は数多く存在するが、有力なものとしてよく知られるのが、パールヴァティ、カーリー、そしてドゥルガーである。

パールヴァティはヒマラヤを出身地とする女神であり(パールヴァティは「山の娘」の意味)、カーリーはおそらくデカン高原東部からベンガルを出身地とする暗黒神、そしてドゥルガーはすでに書いたようにデカン高原中央部である。

(カーリー女神については以下のページを参照)
http://chaichai.campur.com/indozatugaku/black.html

共通しているのはどの土地も先住民が非常に多いことであり、シヴァ自身も先住民文化を母体として発生した可能性がある。さらに言うなら息子のガネーシャ、カールティケーヤ(南インドではムルガン)なども先住民の神であった可能性が強く、シヴァファミリー(聖家族)は、一般インド人(というものが存在するかどうかは微妙だが…)から見れば、わけの分からない異形の神たちばかりで構成されている。

美しい女神であると同時に生贄を求めてやまないドゥルガーの存在感は今も健在である。インド各地のいたるところでライオンに乗った女神を見ることが出来る。とりわけ東インド、ベンガルでは、同じく殺戮の女神であるカーリーとの関連もあって絶大な人気を誇る。10月にはドゥルガープジャと呼ばれる祭りが盛大に催される。コルカタがとくに有名だ。

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(追記)

ドゥルガーは美しい女神として描かれるが、本来の姿は非常に醜いものであったとされる。その名残を残すのがチャームンダーという女神である(下記のURLを参照)。
http://chaichai.campur.com/chaiyadefile/musiam01.html#link03

ドゥルガーが生まれたヴィンディヤ山脈の伝説についても触れておく。

太陽がメール山(カイラス)を中心にまわることに怒ったヴィンディヤ山は、自分の背を伸ばして太陽の動きを邪魔しようとした。そこに現れたのが聖人アガスティヤ。南インドに用事があるので、いっとき背を低くしてもらって山を越えさせてほしいとヴィンディヤ山に頼み込んだ。さらに、帰り道もあるので、帰ってくるまでそのままでいてほしい、と要望した。

ヴィンディヤ山はアガスティヤの要望を受け背を低くしたが、アガスティヤが帰ってこないため、今も背が低いまま、彼の帰りを待っているのだという。

つまり、アガスティヤに騙されたわけだが、一度した約束を、約束だからといって守り続けてしまうところが、先住民の素朴さとバカ正直さを物語っている。が同時に、ヴィンディヤ山(周辺の文明)がかつてヒマラヤと覇権を争うほどの勢力を持っていたことをこの伝説は物語っている。






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(当HP内、インド神様記事へのリンク集)

主要記事

殺戮の女神カーリー
ゾウの神様ガネーシャ伝説
シヴァという世界観
悪霊シヴァの起源
じつはインド最強ドゥルガー女神
水の女神サラスヴァティー
ダキニ(黒魔術の系譜)
猿の神様ハヌマーン
ナーガ(1)蛇神ナーガの系譜
ナーガ(2)蛇神ナーガと日本
宇宙の主ジャガンナート神
シヴァとビシュヌの子アイヤッパン
インドの神々(概要)

ページ内小さな記事
(これらの記事は「博物館で出会ったヒンドゥの神々」
各ページ内の特定の場所にリンクしています)


破壊神シヴァの化身バイラヴァ
没落したインド三大神の一つブラフマー
大地母神チャームンダー
殺戮の女神ドゥルガー
天の川の女神ガンガー
鳥の神様ガルーダ
最強の神ハリハラ
生首を手にしたカーリー女神
鬼族の守護神クベーラ
マヒシャを殺す女神ドゥルガー
シヴァの息子にして軍神カールッティケーヤ
半獣半人の神ナラシンハ
猪顔の神ヴァラーハ
シヴァと並ぶ最強最大の神ビシュヌ
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