ガンゴートリー
ガンジス川降下伝説の地

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ガンゴートリー YGANGOTRI (標高3048メートル)



ガンジス川源流の聖地ガンゴートリー。ガンジス川に魅せられた人々が一度は訪れる仙境である。実際の源流はさらに15キロほど歩いたゴームクにあるが、大昔はガンゴートリーあたりまで氷河が続いていて、まさにこの場所からガンジス川が流れ出ていたとする説もある。氷河期が終わったのがおよそ一万年前だから、その頃の話かもしれない。それからゆっくりと地表温度が高くなり、源流も後退していったのだろう。

太古の時代を想像するのは楽しい。ガンゴートリーも今とはまったく違った風景を見せていたに違いない。おそらく山のあちらこちらに氷河が存在し、 今よりずっと荒涼とした風景だったのだろう。

その当時、道なき道をさかのぼり、聖地ガンゴートリーを発掘したのはおそらくサドゥであるが、ここではそれに触れない。サドゥについては「サドゥ 小さなシヴァたち」をご覧ください。

ガンゴートリーの中心は女神ガンガーをまつった小さな寺だ。夕暮れ時、プジャ(礼拝)の様子を眺めるのが楽しい。この寺と、下流側にあるバススタンドのあいだの一本道がバザールとなっており、ホテルや食堂、土産物屋がひしめいている。

バザールと平行してガンジス川が流れており、小規模なガートが少し上流まで続いている。ガンジスの流れは非常に速く、砂利や泥を巻き込みながら流れていくためいつも黄土色に濁っている。

ガンゴートリーはヒマラヤにおけるチャールダーム(四ヶ所巡礼)の一つだが、濁った泥水が流れていくのはここガンゴートリーだけである。それはまるで工事現場の下流か、あるいは大雨が降ったあとのような眺めだが、それがかえって奇妙な感動をもたらしてくれる。つまり、それがまさしく大陸を流れていく川にふさわしいと思えてならない。

(注) ヒマラヤ巡礼についておよびチャールダーム近郊の簡単地図もあわせてご覧ください。

スーラジクンド
パンダゴパーのある森

ガンジス川の激しさを感じたければスーラジクンドを訪れたい。バススタンド近くから川へ降りていく道をたどり、橋を渡れば見えてくる。幅の広い滝であるが、大音響とともに滝壺に落ちていくのはやはり泥水である。規模も高さも特筆するほどではないが、見た目の印象は非常に強い。

滝の上にいくつか巨岩があるが、その上で瞑想するサドゥがたまにいるようだ。瞑想というと静けさが必要とされがちだが、この滝で行う瞑想はまったく違ったものになるだろう。そこで感じるものはまさに自然のエネルギーそのものである。

スーラジクンドあたりから下流側の森、つまりバススタンドから見て対岸側に散歩道が続いている。鬱蒼とした森の中にいくつかの巨岩がある。そのうちの一つは下部に洞窟のような穴がある。実は穴は貫通しており、はいつくばって進むと反対側に出ることが出来る。

洞窟の名はパンダゴパ 。同行したサドゥの話では、約5000年前、マハーバーラタに登場する五兄弟がこの地に隠れたさい、住んでいた場所なのだという。

ところでパンダゴパのゴパは洞窟、パンダは5(兄弟)を意味するパンチが訛ったものだと単純に思っていたが、よく考えると五兄弟はパンドゥー家の一族である。つまり、パンダゴパは五兄弟の洞窟ではなく、パンドゥー家の洞窟(パンドゥーゴパ)という意味かもしれない。

パンダゴパは散歩道の終着点近くにある。ただし目印などもないから少し分かりにくい。また森の中は人気が少ないので女性一人での散策は勧められない。その辺の旅行者を誘うのが無難だ。ガンゴートリーを歩いていると、ガイドが「パンダゴパー往復で100ルピー」などと声をかけてくるが、距離を考えれば50ルピー(約150円)程度が適正料金。

 
 
 

ガンゴートリーへはリシケシからバスで二日が一般的。まず、バスで約9時間走ってウッタルカーシーで一泊。翌日、別のバスで約5時間走れば到着だ。一部のツーリストバスは一日で走るようだが、詳細は不明。リシケシやハリドワールの旅行会社に問い合わせてほしい。

ガンゴートリーには、そこそこ宿がある。最盛期でも泊まれないということはないだろう。ただし、どの町でも同じだが、早めの到着が望ましい。宿はバススタンドから寺にかけてのバザール沿いにいくつもある。もっと静かな環境が良ければ、寺の前で右折し、橋を渡った対岸にもいくつか宿がある。安く泊まりたければ対岸のアシュラム(僧院)がおすすめ。

ガンゴートリーに来たからにはさらに上流のゴームク(ガンジス川源流)までトレッキングするのがおすすめ。体力にもよるが、通常は往復二日の行程。詳細はゴームクを参照。

一本道なのでガイドの必要はそれほどないが、体力に自信がなければポーター兼ガイドを雇うことが出来る。一日の費用は食事代込みで400ルピーから500ルピー。その辺で声をかけてくるガイドと直接交渉となる。ホテルに頼んでもよいが、結局は同じことかもしれない。候補が見つかれば、チャイでも飲みながらじっくり人間性を観察し、嫌ならさっさと断ればよい。ただし、トレッキングは通常二日のみで、泊まるところ(通常はボジバーサーのアシュラム)も比較的しっかりしているので、誰を雇ってもあまり変わりはないかもしれない(タポヴァンへ行くならガイドは必要)。

ゴームクへはバススタンドから少し下った場所から山沿いの小さな登山道を登っていく。サドゥや流れ者のテントが密集しているのですぐ分かる。松林の中をしばらく歩くと国立公園の管理事務所があり、ここで入園料を支払う。金額は忘れたが、(貧乏旅行者にとっては)高くもなく安くもなくといった金額である。帰りもチェックがあるので必ず支払ったほうがよいだろう。

(注) ヒマラヤ巡礼についておよびチャールダーム近郊の簡単地図もあわせてご覧ください。

 
 
朝の光
夕暮れ
 



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