タポヴァンはシヴァリンガム峰の真下に広がった小さな草原地帯である。現在でこそトレッカーや旅行者がやってくるが、古くはサドゥだけの秘密の聖域だったに違いない。彼らサドゥーの小屋がいくつか点在している。ただし不在のことも多いので、宿泊できるかどうかは分からない。いずれにしても、タポヴァンで宿泊するならこの地に詳しいガイドと一緒に訪れたほうがよい。宿泊しないなら、草原を散策して、早めに山を下りよう。
ちなみにゴームクのアシュラムからタポヴァンは通常4時間ほど。タポヴァンでの滞在時間も含めて往復で10時間ほどだ。日帰りするなら早朝出発したい。
タポヴァンにいくつ泊まれる小屋があるのかよく分からない。僕はマタジーアシュラムという場所に宿泊したが、先方の食糧事情によって一泊で山を下りた。同伴者がそこの常連だったので、義理立てする必要があったようだが、詳しくは分からない。いずれにしろ、タポヴァンで宿泊するならトレッキングの出発点ガンゴートリーで十分に情報を集める必要がある。
宿泊の手はずが整ったら夕方の散歩に出たい。草原をおだやかに流れていくのは、急斜面を登っている最中に出会ったアマルガンガーである。草原の先にはシヴァリンガム峰の威容が立ちはだかる。シヴァ派のサドゥにとって、これほど理想的な場所はないだろう。
あらためてガンジス川沿いの氷河を眺めると、そこにはいくつもの湖が点在する。対岸にはナンダンバンという、これまた美しい場所があるらしい。次回来るときには、テントを持ち込んで、山中を気ままに渡り歩いてみたいものだ。
ちなみに、ガンジス沿いの谷間をずっとさかのぼって峠を越え、反対側の谷間を下るとチャールダーム(四ヶ所巡礼)の一つ、バドリナートにたどりつく。ただし期間は最低10日間、ガイドと多数のポーターを従え、テントや食料を持っての大旅行となる。
なお、サドゥの小屋に泊まったら、出発する日にいくらかの喜捨をする必要がある。といっても賽銭ではないから10ルピー、20ルピーというわけにはいかない。決まった金額はとくにないが、一泊につき最低100ルピー程度は支払いたい。
大変なことも多いが、苦労をしてでも行く価値がある。ただし、さまざまな危険があるので、自信がなければゴームクでとどめておくほうが無難だろう。
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