タポヴァン
源流よりさらなる高みの仙境

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タポヴァン TAPOVAN(標高4460メートル)
友達のサドゥーとバギラティー峰
タポヴァンから見上げたシヴァリンガム峰

仙境を訪れたいとずっと思っていた。そんなときに知ったのがここタポヴァンだった。ガンジス川源流ゴームクのさらに奥、標高約4500メートルの別天地である。目の前にはシヴァリンガ峰、すなわちシヴァがそびえたち、小川が流れる平原に仙人(サドゥ)たちの小屋が点在する。旅の様子は「サドゥ 小さなシヴァたち」に書いた。ここでは、実用的な旅案内を、ガンジス川源流ゴームクを基点として簡単に説明する。ゴームクまでの道案内はゴームクのページを参考に。

タポヴァンへの道はゴームクの手前200メートルぐらいの分岐点から左折して始まる。分岐点からはゴームクの氷河を見下ろしながら不安定な山道をどんどん登っていく。 やがて岩だらけの大地が広がる。目の前にはバギラティー峰、右手には先の尖ったシヴァリンガム峰がそびえたつ。タポヴァンはシヴァリンガム峰の真下であるから、右手、右手と道をたどるが、このあたりのトレールは大変分かりづらい。というより、毎年のようの道自体が崩落したりして消滅するから、そのつど、新しいルートが開拓されるらしい。

巨岩がゴロゴロする荒地をシヴァリンガム峰の方角へひたすら歩く。地面が砂と岩ばかりなので分かりづらいが、ここは氷河の上である。氷河の下を流れているのは当然ガンジス川だ。真下に流れる水は数百メートル先で外界へと流れ出る。

ここまでのルートを整理する。つまり、ガンジス川左岸から登りはじめ、源流を越えたところで、その奥に続く氷河を渡って右岸に行こうとしているのだ。

右岸にたどりついたら、そこからタポヴァンへの登り道を探す。ここまで来ると、シヴァリンガム峰は目の前の崖の影に入ってその姿は見えない。ここからはひたすら急坂を登るのみである。先が見えないが、登り終えたらそこはタポヴァン、焦らずゆっくり歩けばよい。途中、右側に、激しく流れ落ちてくる川が見える。川の名はアマルガンガー。水質は保障できないが、水を飲むことも出来る。

一服したらさらに急坂を登る。急坂は登るのはしんどいだけだが、下りは注意を要する。誤って滑り落ちたら命の保証はない。

もう登るのは嫌だ、と思う頃、ようやく草原のタポヴァンに到着。そこから見る景色は圧巻である。ガンジス川へ続く氷河が山の向こうへと続いているのが手にとるように分かる。その向こうにはバギラティー峰の勇姿。壮大で美しい眺めはいつまでも飽きることがない。

(注) ヒマラヤ巡礼についておよびチャールダーム近郊の簡単地図もあわせてご覧ください。

 
 
マタジーアシュラムのお母さん
タポヴァンから眺めたガンゴートリー氷河
 

タポヴァンはシヴァリンガム峰の真下に広がった小さな草原地帯である。現在でこそトレッカーや旅行者がやってくるが、古くはサドゥだけの秘密の聖域だったに違いない。彼らサドゥーの小屋がいくつか点在している。ただし不在のことも多いので、宿泊できるかどうかは分からない。いずれにしても、タポヴァンで宿泊するならこの地に詳しいガイドと一緒に訪れたほうがよい。宿泊しないなら、草原を散策して、早めに山を下りよう。

ちなみにゴームクのアシュラムからタポヴァンは通常4時間ほど。タポヴァンでの滞在時間も含めて往復で10時間ほどだ。日帰りするなら早朝出発したい。

タポヴァンにいくつ泊まれる小屋があるのかよく分からない。僕はマタジーアシュラムという場所に宿泊したが、先方の食糧事情によって一泊で山を下りた。同伴者がそこの常連だったので、義理立てする必要があったようだが、詳しくは分からない。いずれにしろ、タポヴァンで宿泊するならトレッキングの出発点ガンゴートリーで十分に情報を集める必要がある。

宿泊の手はずが整ったら夕方の散歩に出たい。草原をおだやかに流れていくのは、急斜面を登っている最中に出会ったアマルガンガーである。草原の先にはシヴァリンガム峰の威容が立ちはだかる。シヴァ派のサドゥにとって、これほど理想的な場所はないだろう。

あらためてガンジス川沿いの氷河を眺めると、そこにはいくつもの湖が点在する。対岸にはナンダンバンという、これまた美しい場所があるらしい。次回来るときには、テントを持ち込んで、山中を気ままに渡り歩いてみたいものだ。

ちなみに、ガンジス沿いの谷間をずっとさかのぼって峠を越え、反対側の谷間を下るとチャールダーム(四ヶ所巡礼)の一つ、バドリナートにたどりつく。ただし期間は最低10日間、ガイドと多数のポーターを従え、テントや食料を持っての大旅行となる。

なお、サドゥの小屋に泊まったら、出発する日にいくらかの喜捨をする必要がある。といっても賽銭ではないから10ルピー、20ルピーというわけにはいかない。決まった金額はとくにないが、一泊につき最低100ルピー程度は支払いたい。

大変なことも多いが、苦労をしてでも行く価値がある。ただし、さまざまな危険があるので、自信がなければゴームクでとどめておくほうが無難だろう。

 
 
アマルガンガーの流れ
 



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