(バス移動)
鉄道は走っていないので、移動は基本的にバスになる。余裕があるならタクシーやジープも使えるが、あまり一般的ではないだろう。一部のサドゥーのように歩いて巡礼できればそれにこしたことはないが、それは無理な注文である。
インドのバスは通常、予約なしで乗ることも多いが、チャールダームヤットラでは十分な注意が必要。たとえばリシケシ発の(ヒマラヤ方面)長距離バスは基本的にすべて予約が必要。とくに5月6月の繁忙期は最低前日には予約したほうがよい。
(注)ハリドワールからの長距離バスの便がある。旅行会社で要確認。
前売り券はリシケシの街外れにあるヤットラバススタンドのチケットカウンターで売り出される。しかし、行ってみるとそこは長蛇の列。さらに割り込みがひどくて、いつまでたってもチケットが買えない。また、システム自体もよく分からないから行くだけ無駄かもしれない。
これは僕の場合だが、すべて旅行代理店におまかせしてしまう。もちろん手数料が必要だが、たかだか数十ルピーで簡単に取れるのだから楽なものだ。ただし旅行代理店でとる場合も、よい席の確保など、十分に念を押しておく。よい席というのは趣味の問題もあるが、普通はできるだけ前の方の席で、窓際ならさらに快適だ。旅行代理店から直接電話をかけるので、その場でくどいくらいに念を押しておきたい。
リシケシから出発するバスはどれも8時間から12時間の長距離バスである。トイレ休憩などは運転手しだい。なるべくトイレに行かないよう、水分の摂取は慎重に。通常は食事休憩を含めて2、3時間に一回の休憩だが、ある運転手は、最初から最後まで、休憩を一度も取らずに走ろうとした。強く抗議して休憩させたが、インドではこんなこともある。
ガンゴートリーに行く場合は通常ウッタルカーシーで一泊となる。次の日に再出発だが、忘れずに前日予約しておくこと。その他、すべての区間で予約の有無を確認したほうがよい。たとえ2時間ほどの距離であっても、やらないよりやったほうがよい。
聖地に走るのはガバメント(公共)バスだけではない。一般的にプライベートバスと呼ばれる一般旅行会社のバスもあり、たとえばチケットを買う旅行会社によって、ガバメントバスになったりプライベートバスになったりするから大変ややこしい。いずれにしろ、バスの座席確保は旅の最重要課題となる。ことあるごとに旅行会社などに質問して、自ら調査するような心がけが必要となる。ちなみにヒマラヤ地域の旅行会社は、デリーなどとは違って、たいていはまともな営業をしている(まもとだがいいかげんということはある…)
インドのガバメントバスは州ごとに形やシステムが違う。たとえばビハール州ではガバメントバス自体が瀕死の状態であるし、また別の州に行けば、すべてのバスが大型で、快適だったりする。
ウッタランチャルのバスは残念ながらあまりよくない。山岳地帯を走るためか、バスが一般的に小さいし、車内も窮屈である。その為、大きな荷物は基本的に屋根の上に乗せなければいけない。バスのうしろにハシゴがあるので、自分で荷物を担ぎ上げる。振動で転げ落ちないように、しばれる部分があったら、なるべくしばる必要がある。また、季節が雨季の前、あるいは雨季真っ最中であることがほとんどだから、雨への対策が不可欠となる。ザックカバーは必須だが、大雨では防ぎきれないので、中の荷物はすべてビニール袋に入れておく。ちなみに雨はほとんど予想できないので、常に対策が必要である。
(宿泊)
一部の聖地では宿の絶対数が少なく注意が必要。すでに個別に書いたが、ヤムノートリーとケダルナートは要注意である。対策はすでに書いたので、それぞれのページを参考にしてほしい。
山岳地帯の宿はどれも似たようなものだ。非常にシンプルである。停電はあるが基本的に電気はある。コンセントもあったりして、バッテリーの充電なども出来る。ただし停電用に必ず懐中電灯を持つ必要がある(インド旅行の必需品だが…)。
布団はたいていあるが、重くて臭い。また、場合によっては寒いので、出来れば寝袋を持っていきたい。 お湯は通常出ない。頼めばバケツでお湯を用意してくれる可能性もあるが、あまり当てにしないほうがよい。
宿泊は通常のホテルやゲストハウスのほかに、巡礼用のダラムシャラー、あるいはアシュラム(この場合は宿坊)が結構ある。外国人を泊めない場所もあるが、ヒマラヤの聖地はかなり開放的だ。値段は安めなので、いろいろ調べてみてもよい。
ただし、タバコ禁止など、いろいろな制約があるかもしれない。ちなみに酒はすべての聖地で禁止である。
以上、上に 書いたことは四ヶ所巡礼の聖地とその周辺についてである。途中の街ではテレビ付きのもう少しいいホテルもある。さらに贅沢をしたいなら、星☆☆☆☆☆の最高級リゾートが町外れの森の中にいくつも存在している。映画スターなどの金持ちが避暑と巡礼を兼ねてやってくるらしい。
(食事)
山奥に行くにしたがい、食事もだんだん質素なものになる。ターリー(定食)が中心だが、山の中で食べるターリーは、正直言って、あまりうまくない。おいしいターリーが食べたければ、アシュラムやダラムシャラーがいいだろう。宗教施設はたいてい飯がうまい。ただしターリーのみで、食事時間も決まっている。
ターリーがあまりうまくない理由は、おそらく、玉ねぎとニンニクの使用が禁じられているためだと思われる。ただし途中の街では普通に使用するので味に問題はない。また、ウッタルカーシーなどの大きな街では、チキンメニューなども奥まった場所には存在する。
そのほか、サモサなどの揚げスナックはどこでもある。あとはチョーメン、つまり焼きソバがおいしい。以前はほとんど食べなかったが、ヒマラヤ巡礼をするようになってから急に好きになってしまった。チョーメンは聖地なら安食堂に普通にあるし、途中の街なら、チョーメン専門の食堂がある。
(荷物および装備)
懐中電灯やザックカバー、あるいは寝袋については上に書いたとおりである。そのほかでは、まず雨具。少しでも山を歩く予定なら必需品となる。また、トレッキングの予定があるならしっかりした靴があったほうがよい。
また山の上はとくに夜が寒いので防寒着の準備が必要。自分が行く時期と場所の標高を考慮すること。四ヶ所の聖地の中では、ケダルナートがほかの聖地より約500メートル標高が高い。一般的には、100メートルにつき0・5度気温が違うとされるが、それは平地の昼間の話。高山での夜はさらに気温差が増す。500メートルの標高差がある場合には、夜は5度以上寒くなるだろう。標高3500メートルのケダルナートでは、つねに真冬並みに気温が下がる危険がある。
平地よりも荷物が多くなりがちだが、実際は少なければ少ないほど旅は快適だ。リシケシやあるいはデリーなどで、預けられる荷物は預けてしまったほうがよい。
(旅の季節)
ヒマラヤ山中にある四大聖地はすべて季節営業である。時期は年によって変わるが、たいてい5月から11月。ハリドワールやリシケシに行けば詳しい情報が手に入るが、最近はネットでも可能だろう。それぞれの寺が門を開くときが日本でいうところの山開きとなるが、場所によっては、その少し前からホテルなどがオープンする。
チャールダームヤットラの最盛期はオープン直後の5月と6月。インドの夏休みとも重なり、すべての聖地が大混雑となる。当然物価も上昇し、ホテルはどこも満室気味となる。賑やかな雰囲気が嫌いな人には向かないだろう。
人々が神々の世界目指してまっしぐらに突き進む様子はときに感動的であり、誰もが聖地に酔いしれる。巡礼文化に興味があるなら迷わずこの季節をおすすめする。ハリドワールやリシケシだけ訪れてもその雰囲気は十分に味わうことができるだろう。気候も悪くない。下界がもっとも暑い時期であり、その分、山は比較的暖かい。
僕が昨年(2005年)一昨年(2007年)と、2年連続で訪れたのもこの季節だった。雨季と秋の経験はないが、以下、一般論を書いておく。
6月終わりぐらいから雨が多くなり、7月になると本格的な雨季となる。巡礼者は少なくなり、宿代なども安くなる。ただしかなりの雨が降るから旅は結構厳しいだろう。インド慣れした人でなければあまりおすすめできない。山道は大雨が降るたびに切断され、場合によっては土砂の中を歩くような状況も考えられる。日程的にも余裕が必要。
(8月にボン祭りというわけの分らん巡礼祭があり、一時期、非常に混みあうらしい。ボン祭りの参加者は非常に下品という噂あり。真偽のほどは分らない。ちなみに「ボン」とは大麻吸引の意である)
雨季の見どころは高山植物。 標高の高い場所では谷間を中心にさまざまな花が咲き乱れる。ジョシマートの先には有名な「花の谷」があり、四日ぐらいで往復できる。その他の聖地でも、標高3000メートルを越える場所で美しい眺めが楽しめる。ただし、この時期の山歩きは危険が多い。激しい流れを渡渉する場面も多く、山を本格的に歩く予定なら、ガイドを雇うことをおすすめする。
9月なかばから雨は少なくなり、いよいよ秋である。10月はじめには天候もよくなり、巡礼も少なく、快適に旅が出来る。ただし、秋が深まるとともに急速に寒くなることが予想される。また、時期によっては雪が降るから、標高の高い場所に行くなら注意が必要だ。
10月いっぱいぐらいにすべての聖地が山を閉め、巡礼シーズンは幕を閉じる。
(その他)
治安はおおむねよい。外国人が多いリシケシでたまに犯罪が起こるが、一般的な旅行をする限り問題はない。ヒマラヤの聖地は非常に神々に近い世界であり、悪い人間でも悪さが出来ない空気が流れている。とはいえ油断は禁物であり、大部屋などで泊まる場合は貴重品の管理などに気を配る必要がある。
宗教的タブーにも気をつけたい。酒などは決して持ち込まないこと。とくに聖地内では厳禁である。ヒンドゥー教に興味がないなら、ほかのヒマラヤで遊ぶほうがよいだろう。北のヒマーチャルプラデシュ州やジャンムーカシミール州のラダックなら、うるさいルールはほとんどない。
多くのトレッキングコースがあるが、そのほとんどはガイドが必要。トレッキングエージェンシーはリシケシに多い。あとはジョシマートにあるぐらい。フリーのガイドならガンゴートリーにたくさんいるほか、その他の聖地でも探せば結構見つかる。
ガイドを選ぶさい、ひたすら値切って安いガイドを選ぶ人がいるが、非常に不可解である。それではよいガイドは見つからないし、いざというとき、あまり助けてくれないだろう。ガイドは自分の命綱であり、うまく使いこなす必要がある。旅の最後にはチップを忘れずに(前もってボーナスをほのめかすぐらいの余裕があればなおよい)。
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