chaichai > サドゥを探しにOm Namah Shivaya>サドゥは山賊?
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チャイを飲んでいるベンチからその谷間が見えないことはすでに書いた。当然クティアのある谷間からも街を見ることは出来ない。街からそれほど遠くないのに、一歩その谷間に足を踏み入れると突然世界が変わってしまったように感じるのもそのためである。あの谷間でサドゥたちはあたかも聖地に背を向けるように暮らしているのである。 サドゥを聖者にたとえる人もいるが、彼らにその言葉は似合わない。聖者は普通の人々から慕われ尊敬されるものである。本当の姿はどうあれ人々の模範になるような存在であるはずだが、谷間のサドゥたちは全然違った。世間の目をまるで気にしていないどころか、むしろ偽悪的でさえある。あのネパール人サドゥのようにわざわざ人の恐怖心をあおって喜ぶようなサドゥもいた。 僕はそんな彼らの姿に三途の川の番人「奪衣婆(だつえば)」のような存在を重ねていた。生と死の境界線に居座る謎の監視人であり、三途の川を渡る死人たちから財産衣装のすべてを剥ぎ取り地獄への引導を渡すおそろしい鬼女である。ここバドリナートにおいては人々が暮らす街と神々の住処であるヒマラヤとの境界に居を構え、その辺りをうろつく旅行者の金品を物色するのである。実際、ネパール人サドゥは僕にしつこく金を迫った。サドゥーと付き合えばそれなりの布施をするのは当然だし、サドゥが何がしかの期待をするのも理解できる。でも彼の要求は度を超えていた。サドゥというより山賊である。
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