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第七章 シヴァの祭りに集う人々

 
 
 
 
 

パチマリはインドでもっとも巨大なシヴァラットリー祭が行われる場所の一つである。シヴァを祭るこの祭りはインド世界のシヴァ寺院で行われるが、パチマリに並び立つのはカトマンドゥーのパシュパティナートぐらいであろうか。少なくともヴァラナシのシヴァ祭などとは比べものにならない。

パチマリ自体は小さな町なので、シヴァラットリーに参加する人々の多くはどこかの遠く近くの町や村から訪れるのだが、 その半分くらいは先住民の人々である。彼らの居住地の多くはおそらく山の中の村であろう。つまり、彼らは山からまた山へやってきたことになる。パチマリはデカン高原のまさに中心地にあるので、山伝いに歩いてやってきた先住民もあるいはいるのかもしれない。地元民の話では、多くの先住民は隣接するマハーラシュトラ州からやってきたゴンド族だということだった。

このゴンド族の「ゴンド」は「ゴンドワナ大陸」の語源になっている。「ゴンドワナ」とは「ゴンド族の土地」を意味しており、地図上ではパチマリより三百キロほど東にその地名を見つけた。ちなみに「ゴンドワナ大陸」とは、一億年以上昔に北のローラシア大陸と並ぶ巨大な陸地が広がっていた場所で、その後、南極、オーストラリア、アフリカ、南アメリカなどに分裂したが、もう一つ忘れてはならないのが分離後、北上してローランド大陸に衝突したインド大陸であった。この衝突によって大地が隆起し、ヒマラヤが出来たことはご存知のとおりである。「ゴンドワナ大陸」という名前がどうしてインドの一部族名から作られたのか、…確か、このゴンドワナから古代の大陸に関する確かな証拠が発見された為だったと思うが、それがどんな証拠であったのかは、インターネットで検索しても出てこない(分かったら書き加えます)。

祭りに集まってきたのは先住民ばかりではない。サドゥー、大道芸人の姿も目立つ。オカマ(上から二番目の写真)集団が気持ちの悪い踊りと破廉恥な歌を披露しながら巡礼者や屋台商に近づき金をせしめる。生まれつき体に障害を持った老婆もいた。ただし彼女はただの乞食ではない。一部の人々は彼女を神の使いとみなしてうやうやしく布施をしているのだ。

パチマリのシヴァ祭に集まるのは先住民も含めて多くはこうしたアウトサイダーたちだが、それにしても、…と、ふと考えた。彼らは一体いつ頃からここパチマリにやってくるようになったのだろう?

パチマリがイギリス人によって発見(?)されたのはたかだか百数十年ほど前のこと。パチマリは彼らの手で避暑地として整備されてきたわけだが、避暑地としてのパチマリと、聖地としてのそれとのあいだに共通点はあまりない。インドの多くの聖地が数千年の歴史を持つことなどもあわせて考えれば、パチマリもまた、聖地として非常に古い歴史を持っていると考えるのが常識的なところだ。とするなら、イギリス人がやってくる以前にも、やはりこうして多くの巡礼者たちがこの奥深いジャングルに集い、洞窟を潜り、さらにシヴァの山(次回紹介)を大挙して登っていたことになる。それは考えれば考えるほど不思議で、そして不気味な光景でもある。

なにしろ 電気も何もない時代である。虎をはじめとする野獣も今の何十倍もいた時代のことである。でもそれは、インドのほかの聖地も同じことではないのか、というと、少し違う。なぜなら、パチマリにはバラモンなど、正統派ヒンドゥーの影がほとんど見られない。どんなに辺境であろうと、そこがバラモンによって認定された場所であるなら、志ある巡礼者によってインドの伝統に名を刻み、イギリスの発見(?)を待つことなく、町が生まれ地図にも記され、そしてさまざまな伝説が付託される。それらの聖地も、おそらくバラモン文化以前から、やはり先住民によって聖地とされていた場所であったと想像されるが、少なくともここ二千年ぐらいは一般インド人によって掌握されてきたわけだし、その影響は今も顕著である。でも、パチマリは違ったのである。誰にも知られずに、ただ先住民のためだけに存在していた。

そのあたりのことを先のガイドにも訊いてみた。でも、彼はあいまいなことをいうだけで、興味すらない、といった感じだった。彼はベンガル出身の普通のインド人なのだが、これはおそらく、ほかのインド人にしたところで同じことだろう。先住民に興味を示した普通のインド人というのをこれまで見たことすらないし、そんなことより、現在パチマリがシヴァの聖地であるなら、それで十分ではないか、といったところであるだろう。はっきり言ってどうでもいいのである。だからそのあたりのことは想像で書くほかないが、それは次回以降にて…。

下にも祭りで出会ったさまざまな人々の写真を掲載した。どれがゴンド族か、などはよく分からないので、ご自由に想像してください。

 
 
 
 
 
 
 

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