二つ見た絵画群の中でもっとも目を引いたのがこれである。光の状態が悪くてやや不鮮明であるが、何か得体の知れない巨大な生物と「人間らしき」生物が戦っているように見える。「人間らしき」生物は派手な飾り物を身にまとっているようである。もしそうであるなら、鳥の羽であろうか。
巨大な生物について、ガイドは「恐竜である」と断言していた。ただし、ガイドの話は参考程度にしかならない。実際、これが何であるかは誰も知らない。すでにこの世に存在しない生物であると思うが、もしかすると、絵が描かれた当時においてもこれは想像上の動物であった可能性もある。巨体のわりには手足がほとんど消滅しているようであり、頭部も不鮮明である。形状的には蛇の仲間であるような気がするが、それよりも「ツチノコ」に近いともいえる(ツチノコもまた、何かを飲み込んだ蛇を見間違えた、との説がある)。
謎の動物の正体は分からないが、絵には奇妙な特徴がある。その体の中心を貫く一本の線である。これは多分、骨ではないかと想像できるが、もしそうであるなら、骨の位置がおかしい。というより、やはりこれは蛇の種類であろう。普通の動物なら、背骨はもっと上方に描かれるのではないだろうか(適当に書いたという可能性もある)。
絵自体はやはり謎めいている。素朴だが、よく見ると、線もしっかりしているし、何か、不思議な魅力にあふれている。右の人間らしき動物にしても同様のことが言えるだろう。これを書いた人たちが見ていた世界というのは、少なくとも僕たちが知る世界とはかけ離れている。まずは、そういった認識が必要なのだと思う。
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