(「Bharata Natyam(バラタナティヤム)」という言葉の意味)
「Bharata Natyam(バラタナティヤム)」という言葉の意味を知れば、この舞踊がどのような性質を持っているかがよく分かる。
BhaはBhava(感情)、raはRaga(メロディー)、taはThala(リズム)、Natyamは舞踊を意味している。感情、メロディー、リズムが渾然一体となって調和を保ち、神秘的な世界を作り上げていくのがバラタナティヤムの真髄である。
(バラタナティヤム芸術の概念)
このテキストを書くためいろいろ調べ物をしていたところ、重要な言葉を見つけた。
バラタナティヤムには、「ヌリッタ」と「ヌリティヤ」という二つの概念があるという。「ヌリッタ」というのは、感情や情感を交えない単なる表現や動きを意味し、「ヌリティヤ」とは、舞踏家の内面から湧き上がる豊かな感情表現を意味している。
一見、見過ごしてしまいそうな話だが、この二つの概念にこそ、バラタナティヤムの真髄があるように思われる。
ギャネンドラ・バジパイ氏の舞踊を見て強く感じたのは、この芸術は、豊かな感情表現の裏に非常に醒めた、あるいはすべてを見破ってしまう冷徹な神のような存在が表現されているのではないか、ということだった。
バラタナティヤムはその俊敏な動作のなかに、「ヌリッタ」と「ヌリティヤ」という二つの概念を不規則に表出させながら、やがて神人合一への境地へと到達する。「親しみやすさ」と「近寄りがたさ」の絶妙なバランスがこの舞踏の魅力である。