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インド舞踊(2)バラタナティヤムその1

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バラタナティヤムについて、簡単な説明をしてみたい。インド舞踊全体に関しては「インド舞踊概要」のページにすでに書いた。

「インド舞踊」のページでも書いたが、僕はインド舞踊に関してまったくの門外漢である。それが調べ物をしながらテキストを作成しているわけだが、ただ概要を書くのはおもしろくないので、傲慢にも、自分なりの考えなんかも書いてしまう。

笑って見逃していただければと願うばかりだ。

(バラタナティヤムの歴史)

バラタナティヤムは世界でもっとも古い歴史を持つ舞踊である。3000年以上の歴史を持つとされるが、舞踊に関するもっとも古い文献としては、3、4世紀に記述された「ナーティヤ・シャーストラ」が知られている。

バラタナティヤムは神に奉納する舞踊であったため、一般に公開されることはなかった。踊り手は「デバダシ」と呼ばれる人々である。これは日本でいうところの巫女であり、踊り子は女性のみであった(現在は男性の舞踏家が数多く活躍している)。舞踊を実際に見ることが出来たのは、おそらく寺のバラモン僧等に限られていた。

そういう時代が、19世紀にいたるまで続いた。

その後、英国統治時代にはいって数多くの伝統が破壊され、バラタナティヤムもまた、いったんは滅亡の危機に瀕したこともあったが、識者たちの手により復興し、舞台芸術として新たな命を吹き込まれて現在にいたる。

なお、バラタナティヤムは南インド、タミルナドゥ州に伝えられた舞踏であり、舞台芸術として復活したのもその州都チェンナイ(旧マドラス)であった。現在は、インドを代表する舞踊として広く普及しているが、基本的には南インドの舞踊である。



(「Bharata Natyam(バラタナティヤム)」という言葉の意味)

「Bharata Natyam(バラタナティヤム)」という言葉の意味を知れば、この舞踊がどのような性質を持っているかがよく分かる。

BhaはBhava(感情)、raはRaga(メロディー)、taはThala(リズム)、Natyamは舞踊を意味している。感情、メロディー、リズムが渾然一体となって調和を保ち、神秘的な世界を作り上げていくのがバラタナティヤムの真髄である。

(バラタナティヤム芸術の概念)

このテキストを書くためいろいろ調べ物をしていたところ、重要な言葉を見つけた。

バラタナティヤムには、「ヌリッタ」と「ヌリティヤ」という二つの概念があるという。「ヌリッタ」というのは、感情や情感を交えない単なる表現や動きを意味し、「ヌリティヤ」とは、舞踏家の内面から湧き上がる豊かな感情表現を意味している。

一見、見過ごしてしまいそうな話だが、この二つの概念にこそ、バラタナティヤムの真髄があるように思われる。

ギャネンドラ・バジパイ氏の舞踊を見て強く感じたのは、この芸術は、豊かな感情表現の裏に非常に醒めた、あるいはすべてを見破ってしまう冷徹な神のような存在が表現されているのではないか、ということだった。

バラタナティヤムはその俊敏な動作のなかに、「ヌリッタ」と「ヌリティヤ」という二つの概念を不規則に表出させながら、やがて神人合一への境地へと到達する。「親しみやすさ」と「近寄りがたさ」の絶妙なバランスがこの舞踏の魅力である。






(バラタナティヤムの特徴)

バラタナティヤムの動きは非常に俊敏で、動作は複雑である。基本となる中腰の姿勢から、四肢を駆使したさまざまなポーズを連続的に展開していく。非常に華麗で、同時に力強い。

バラタナティヤムは、豊かな顔の表情と体全体の多様な動き、そしてムドラーと呼ばれる細かな指先の動きからなる。これらの動きはさまざまなバリエーションを形作りながら次々と変化を遂げていく。

直線的な動きが多いことから、見る側からすると非常にダイナミックに感じられる。また、その底流には決まったリズムが絶えず刻まれ(舞踏家の足首には実際、鈴がつけられている)、正確なムドラーとあいまって、宇宙を感じさせるような静謐な印象も兼ね備えている。

次のページ「バラタナティヤムその2」では、バラタナティヤムにとって非常に重要な感情の表現(ナヴァ・ラサ)と、指先芸術であるムドラーについて、簡単に説明する。

※当ページの男性舞踏家はすべてギャネンドラ・バジパイ氏

(2008年春)









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