「インドのアスカを探しに(1)」からのつづきです。
カリコットはいいところだったが長居は無用。今回の目的地はアスカである。どんなところかもまったく分からないが、とりあえず行こう。
というわけで、運転手が待つ車へ。
「どうでした?」「よかったです。ここがアスカだったらもっとよかった」「ハハハ…」
ここでちょっと探りを入れてみる。「アスカはもっといいところなんでしょうね〜?」「さ〜、どうでしょうね〜。…(しばし沈黙)…まっ、とりあえず行きましょうか?」
たしかにここでいろいろ話しても仕方がない。すべてはアスカに到着してからだ。 運転手が座りなおし、さ〜出発、といきたいところだったが、ここで思わぬトラブルが発生した。なんとエンジンがかからないのだ。最初は「あれっ?おかしいな〜」とか言っていた彼の口から会話が消えた。そのうち10分がたち、20分がたち、30分がたった。
「あの〜、電話してきます」と汗まみれの運転手がどこかへ走っていった。 待つこと30分。さらに汗まみれになって彼が走って帰ってきた。インド人がこんなにも走るというのはよほどのことだ。
「すみません。宿に電話しました。すぐに他のタクシーを行かせるということです。ただ、二時間半から三時間かかります」
時計を見ると、すでに10時を超えている。本当だとそろそろアスカに到着しようという時間だが、完全に予定が狂った。しかし、仕方がない。とりあえず計算する。午後の1時か、遅くとも2時にここを出発してアスカに到着するのは4時。えっ、4時!ということは、現地で行動できる時間はわずか三時間!
(ちなみにこの田舎町にタクシーなどというものは存在しません)
ここまで来たらがんばってやるしかない。でも何をやるんだろう。現地の情報今もって皆無である。あとから考えると、先方の失敗でもあるのだから割増料金なしで現地一泊にすればよかったが、そのときは頭が回らなかった。
カリコットに半日ぐらい居たいな〜とさっき考えていたのが現実のものとなった。すでに3時間近くここにいる。あと2時間半。 ちょっとはずれに小さな寺があるそうなので、歩いてそこへ向かう。おだやかな山並みと農村風景がなんとも気持ちいい。アスカのことがなければ、夕方までここでのんびり過ごして、修理が終わった車でプリーに帰りたいくらいだ。ここがアスカであったらよかったのに…、と思わずまた愚痴が出るが、ここは我慢だ。
町外れにある小さな寺もまたよかった。沐浴池の周囲に色とりどりの小さなお堂が点在している。そこで昼間から村人たちが体を洗い、洗濯している。周囲には椰子の木やその他の木々が茂る。乾燥した地域を旅してきたので、ほっと一息つけるのがうれしい。昔ながらのインドはまるで天国のようにおだやかだ。
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