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インドのアスカを探しに…(2)

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「インドのアスカを探しに(1)」からのつづきです。

カリコットはいいところだったが長居は無用。今回の目的地はアスカである。どんなところかもまったく分からないが、とりあえず行こう。 というわけで、運転手が待つ車へ。

「どうでした?」「よかったです。ここがアスカだったらもっとよかった」「ハハハ…」

ここでちょっと探りを入れてみる。「アスカはもっといいところなんでしょうね〜?」「さ〜、どうでしょうね〜。…(しばし沈黙)…まっ、とりあえず行きましょうか?」

たしかにここでいろいろ話しても仕方がない。すべてはアスカに到着してからだ。 運転手が座りなおし、さ〜出発、といきたいところだったが、ここで思わぬトラブルが発生した。なんとエンジンがかからないのだ。最初は「あれっ?おかしいな〜」とか言っていた彼の口から会話が消えた。そのうち10分がたち、20分がたち、30分がたった。

「あの〜、電話してきます」と汗まみれの運転手がどこかへ走っていった。 待つこと30分。さらに汗まみれになって彼が走って帰ってきた。インド人がこんなにも走るというのはよほどのことだ。

「すみません。宿に電話しました。すぐに他のタクシーを行かせるということです。ただ、二時間半から三時間かかります」

時計を見ると、すでに10時を超えている。本当だとそろそろアスカに到着しようという時間だが、完全に予定が狂った。しかし、仕方がない。とりあえず計算する。午後の1時か、遅くとも2時にここを出発してアスカに到着するのは4時。えっ、4時!ということは、現地で行動できる時間はわずか三時間!
(ちなみにこの田舎町にタクシーなどというものは存在しません)

ここまで来たらがんばってやるしかない。でも何をやるんだろう。現地の情報今もって皆無である。あとから考えると、先方の失敗でもあるのだから割増料金なしで現地一泊にすればよかったが、そのときは頭が回らなかった。

カリコットに半日ぐらい居たいな〜とさっき考えていたのが現実のものとなった。すでに3時間近くここにいる。あと2時間半。 ちょっとはずれに小さな寺があるそうなので、歩いてそこへ向かう。おだやかな山並みと農村風景がなんとも気持ちいい。アスカのことがなければ、夕方までここでのんびり過ごして、修理が終わった車でプリーに帰りたいくらいだ。ここがアスカであったらよかったのに…、と思わずまた愚痴が出るが、ここは我慢だ。

町外れにある小さな寺もまたよかった。沐浴池の周囲に色とりどりの小さなお堂が点在している。そこで昼間から村人たちが体を洗い、洗濯している。周囲には椰子の木やその他の木々が茂る。乾燥した地域を旅してきたので、ほっと一息つけるのがうれしい。昔ながらのインドはまるで天国のようにおだやかだ。

いったんバザールに戻って安食堂で昼飯を食べる。魚カレー付きのカレー定食が20ルピー(約50円)、しかも美味である。下がその写真。写真の左下は野菜の揚げ物。これが単調なカレーにアクセントを付けている。一番上はダル、豆カレー。葉っぱに盛られた雰囲気も好感が持てる。ここで一泊したいぐらいだ。
(カレーの下の写真は町の人からもらった食べ物。名前は忘れた。何で出来ているのかも不明。ちなみに写真上方、二つのボールはインド伝統のお菓子です)

そうこうしているあいだに、ようやくプリーからのタクシーが到着した。車の中にはなぜか二人。交代要員だという。簡単に自己紹介したが、二人とも英語がほとんどできない。無愛想で、客あしらいにも不慣れなのがありありと見てとれる。つまり、これは観光用ではなく普通のタクシー、もちろん車体もボロボロで、本当にアスカまで行けるのか不安になるぐらいだ。

とは言え、これしかないのだから仕方ない。「仕方ない」という言葉を今日は何度繰り返すのだろう?などと一人愚痴りながら、タクシーに乗り込み、あらためて出発である。

半日を過ごしたカリコットについて少し付け足しておく。外国製の詳細な地図を見ると、一応カリコットには寺マークなどがついていて、オリッサでも、ほんのわずかにだが、知られた寺町であることが想像できる。

地理的に言えば、海に面した平原と、その奥の、山の世界を分ける分岐点にあたる。そういった場所が聖地になるのは、インドではわりと普通のこと。つまり結界のようなもの。

カリコットの先についても簡単に紹介しておく。その先は下り坂となり、道は比較的広い盆地へと下っていく。 地図を見る限り、盆地には何本かの街道が走っているようだが、それらの街道が盆地の中心でまじわる場所がアスカである。ただし、アスカを含めて大きな町はほとんどなく、インドの片田舎であることは間違いないだろう。

盆地の奥、つまり西側にはさらに大きな山々が広がっており、そこは聞くところによるとまさに未開の地であるという。というのも、オリッサはもともと先住民の人口比率が非常に大きく、いったん山に入ると普通のインド人がむしろ少数派となる最辺境の地となってしまう。

先住民の生態は今だ謎の部分も多く、インド政府が把握できないぐらいの部族民がまだ数多く生息しているようだ。もちろん一般旅行者がぶらつく気軽な場所ではない。大袈裟にいえばそこはアマゾン奥地にも匹敵する世界屈指の秘境と言ってもよい。

アスカは秘境の玄関口でもある。そういう意味では、たしかに不思議な場所かもしれないし、地図を見て心惹かれるものは多少なりともあった。奈良の飛鳥(明日香)もまた、吉野、大峰、あるいは熊野といった山の世界を背にした町でもある。地理的な意味では、共通点はたしかにある。

「インドのアスカを探しにいく(3)」に続く)







サドゥ 小さなシヴァたち

インドの放浪修行者
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