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インドにアスカという町があるらしい

インドのアスカを探しに…(1)

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「インドにアスカと呼ばれる場所があるらしいから、機会があったら、是非取材してきてほしい」

ある出版社からそんな依頼を受けていた。奈良の明日香村、飛鳥地方に因んだ企画である。

場所は東インド・オリッサの山の中。とりあえず本屋に行って地図で調べると、Asikaという地名があった。つまり、「アシカ」あるいは「アスィカ」である。これは無理だな〜というのが最初の感想だった。たとえ何もないような場所であっても「アスカ」なら記事になる。でも「アシカ」や「アスィカ」ではたんなるこじ付けになってしまう。

さて、どうしよう。三十分近く地図を漁っていたが、最後になって、ようやくAskaと書かれたものを見つけた。しかしたった一冊である。まったく確証はない。たんなるスペルの書き間違いかもしれない。それに、日本ではアスカ(飛鳥、明日香)をAskaと書くのがなぜか横行しているが、本来はAsukaであるだろう。まあ、それはいいとしても、それではインドで仮にAskaがあったとして、それは本当に「アスカ」と発音するだろうか。

よく分からないことばかりで正直言って気乗りしないが、じつはこのとき、一ヶ月ほどのインド旅行を目の前に控えていた。時間に制限はあったが、オリッサの近くまで行くことになっていて、謎のアスカに行くことも十分に可能。いろいろ検討した結果、とりあえずオリッサまで行き、観光地であるプリーでAskaやらAsikaの発音を聞いたうえで行くか行かないかを決定しよう、ということにした。

じつは「インドのアスカ」に関する本がすでに出版されている。「ノストラダムスの大予言」で有名な五島勉氏が書いたものだが、本のタイトルは、例によって非常にあやしく、書くのも少しためらわれるが、「幻の超古代帝国アスカ―ついに発見された人類最古の地球文明」(祥伝社)という本である。

内容に関してはここでは触れない。おもしろいと思える部分もたくさんあったが、もちろん矛盾もあり、首をかしげたくなるような記載もある。ただ、学術本ではないから、そんなことはどうでもいいことかもしれない。アスカで見たという謎の物体が存在する詳細な場所などについてはやはり書かれていない。

オリッサのプリーに到着したのが三月終わり。さっそくいろいろな人に聞いてみる。スペルに関して言えば、AskaもAsikaもあるそうだ。肝心の発音だが、これまた「アシカ」でも「アスィカ」でも「アスカ」でもいいという。非常にいいかげんな話ばかりだが、一体、どんなところかと聞くと、何にもないところだという。「寺は?」「寺はどこでもある」「古代遺跡は?」「知らん!」

また迷いはじめていたころに泊まっていた宿の主人がイエローページを持ってやってきた。アスカのコード名は間違いなく「Aska」だというのである。考えていても仕方がない。第一、時間がない。ということでとりあえずアスカに行くことにした。

最初はバスでちょこちょこっと行こうかと考えていたが、かなり不便な場所らしい。バスだと日帰りは無理で、宿があるかどうか分からない。企画が通れば金は出るわけだからと、思い切ってタクシーをチャーターすることにした。 往復たしか3000ルピー。一万円弱である。インドでは何日も過ごせる金額だ。

二日後の早朝、まだ真っ暗な時間に出発した。宿の主人が気を利かせてくれて、普段、自分が使用している運転手と車を用意してくれた。朝早くて眠いのでとりあえずうしろのシートで寝ることにする。アスカまではなんと四時間以上の距離だというから、休めるときに休んでおこう。

途中で起され幹線道路上に並ぶ一軒の軽食屋で朝飯。これから内陸部に入っていくという。ドライバーは英語も話すし礼儀正しい。アスカは何度か通ったことはあるが、やはり何もないところだという。まあ仕方がない。すべては現地に到着してからだ。

車はやがて潅木が茂る山道へと入り込んでいく。辺境という雰囲気が出てきた。しばらく走ると小さな街に到着した。町の名はカリコット。古い寺が点在しているから、少し散歩するかと運転手が気を利かす。三十分ほどということで町を巡ることにする。

カリコットはいい町だった。点在する寺はどれも静かで雰囲気もあり、住民もおだやかで親切だった。のんびり半日ぐらいを過ごしたくなるような、オリッサの古きよき田舎町だな〜、と思っていたら、なんと望みがかなってしまった。思いもかけない形で…

「インドのアスカを探しにいく(2)」に続く)

 






サドゥ 小さなシヴァたち

インドの放浪修行者
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