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カンチープラム(1)カイラーサナータ

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カイラーサナータ、シヴァ神が住むカイラスを模した寺院である。

作ったのはマハーバリプラムの海岸寺院と同じくパッラヴァ朝。8世紀はじめの作とされている。寺院の形は海岸寺院とよく似ているが、雰囲気は少し違う。牧歌的な印象が少し薄れ、より神秘的な雰囲気を醸し出している。

特徴的なのは、寺のいたるところで見られるシヴァ、あるいはシヴァの家族や眷属のレリーフ。アウトサイダーとしての、あやしげなオーラを放つシヴァワールドに満ちあふれている。

専門的なことは分からないが、個人的には非常に好きな寺院である。 カイラーサナータ寺院をあらためて見たことで、こうした古代建築に大きな興味を持った。



上の写真はシヴァとパールヴァティー。一見、未完成なのかと思うような、やや稚拙な表現が目立つのがマハーバリプラムと違うところだが、それがまた、別の魅力ともなっている。

下の写真もやはり稚拙な感じだが、鳥を手にした女神(パールヴァティーであろうか)のたたずまいに不思議な魅力を感じる。ゾウのレリーフなどは調和すらとれていないが…。


上の彫像を見ていてひどく気になったので、近くにいたガイドに「シヴァか?」と聞いたが、「違う」と答えた。彼の答えを書きとめ忘れたが(知らない名前だった)、しかし、このような蓬髪と、自由奔放な姿を見せるのは、やはりシヴァの一面と見てよいだろう。下の写真もひどく躍動的だ。


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(追記、この項を作るにあたって、以前、カイラーサナータ寺院について書いたページを削除したが、テキストを捨ててしまうのも忍びないので、下に転載しておく)


好きな遺跡といえば、南インド、カンチープラムにあるカイラーサナータ寺院をあげたい。7世紀に作られた南インド最古級の寺院だが、その魅力はそこかしこに彫られたシヴァ神とその妻の彫刻だ。シヴァという神は非常に謎めいた存在ではあるが、インドで一番人気のある神様でもある。現在もさまざまな場所でその絵を見るし、リンガ(男根)にかたどられた姿で路地の奥にひっそりと祭られているのに出会うこともある。シヴァはまた、踊りの王であり、殺戮者でもある。でも、カイラーサナータ寺院で見るシヴァはとても穏やかだ。特に妻のパールヴァティーといる姿はなんとも愛らしい。これを彫った人々の心もまた、とても穏やかなものだったと想像できる。

シヴァには「パシュパティ」の別名がある。「野生の王」の意味だ。シヴァは猟師出身の神様なんだと思う。カイラーサナータ寺院にも、「野生の王」としてのシヴァが数多く描かれている。

若い頃のシヴァというのは社会を捨て、一人森に入った異端者であった。シヴァは猟師となり、森を彷徨した。そしていつしか、シヴァは森の支配者として恐れられ、また敬愛されるようになっていた。シヴァはその後、ガンジス川のほとりを歩き回った。おもに火葬場で暮らしたシヴァの取り巻きは悪鬼たちであったと神話は伝える。シヴァはどうしようもない乱暴者であった半面、孤独でもあった。その姿はスサノオノミコトを彷彿とさせる。

恐怖の神シヴァのもう一つの特徴は優しさでもある。最初の妻サティーを失ったシヴァは、妻の亡骸を抱えて荒野を泣きながらさまよい歩いた。あまりに嘆き悲しんだため、世界は暗黒に閉ざされた。サティーの亡骸は、ビシュヌ神の放った円盤に切り刻まれインド中にばら撒かれた。そこで、シヴァはようやくわれを取り戻したという。サティーの亡骸が落ちた場所はやがて聖地となった。カイラーサナータ寺院に祭られているパールヴァティーは実はサティーの生まれ変わりなのだ。シヴァはパールヴァティーを伴い、ヒマラヤの霊峰カイラスに今も住んでいる。長い放浪の末に得た至福の時間を表現したのが、カイラーサナータ寺院だ。

シヴァ神話に登場する生まれ変わりというテーマは、今も映画などでたびたび見受けられる。また、映画の主人公にはしばしばシヴァの性格が投影されていて興味深い。シヴァの優しさや孤独がそこで浮き彫りにされ、人々の感動を誘う。もちろん、熱狂的な踊りもまさにシヴァの魂が憑依したものに違いない。カイラーサナータ寺院は1300年を経た今もインド人の心に生き続けている。

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