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インドベジタリアンワールド(インド野菜主義)

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最近、インドを旅行していて、肉を食べることがほとんどない。ついでに言えば、酒も飲まない。こう書くと、何か、特に健康に気をつけているのか、と勘ぐられるが、そうではない。強いて言えば、インドの食文化に素直に従っているためである。実際、普通に旅行して、普通に食堂に通っていると、肉を食べる機会も酒を飲む機会もほとんどないことに気付くことだろう。肉料理は、特にノンベジタリアンレストランと銘打っている店でないと普通はおかれていないし、酒にいたっては、「BAR」でしか客に飲ますことは出来ない。

そうは言っても、インド人が肉を食べないわけではないんだろう、と人は思うかもしれない。それについて、ちゃんとした統計は持っていないが、個人的な予想から言えば、おそらくインド人の30パーセントから、もしかすると40パーセントがまったく肉を食べない生活をしている。しかも、そのほかの60パーセントから70パーセントのインド人のうち、普段は肉食しない人の割合は、間違いなく50パーセントを超える。つまり、毎日野菜以外の何らかの肉(魚、卵を含め)を摂取する人は、多く見積もってもインド人全体の25パーセントぐらいではないだろうか。

理由は二つ考えられる。まず、宗教的に肉食が嫌われている、という理由があげられる。基本的に、ヒンドゥー教では肉食が好まれないので、たとえ肉食人でも、ヒンドゥー教徒である限り、「肉が食いたい、肉が食いたい」などと、わめき散らすことは決して出来ないだろう。人間性を疑われてしまう。

肉を食べないもう一つの理由は、肉が高価であるからだ。「でも、町にいっぱい牛が歩いてるじゃない」と旅行者は思うに違いない。確かにそうだが、では、誰があの牛をさばくのか、という問題がある。また、さばいたところで、ヒンドゥー教徒は決して牛肉を食べることはない。なぜなら、牛はシヴァ神の従者ナンディーの眷属であるからだ。反対に、イスラム教徒は豚を不浄として食べない。結果として、インドでは、牛と豚はほとんど食べられなくなった。

インドでよく見かける肉といえば、鳥肉と山羊肉だ。あとは魚だが、沿岸部以外ではあまり一般的ではない。最近のインドはましになったが、一昔前、この国では、牛を横目で見ながら人が飢え、死んでいった時代があった。

さて、野菜のみを食べて生活するインド人だが、一体それで栄養が取れるものだろうか。彼らの食生活を見ると、ともかく豆を食べる。豆カレー、蒸かし豆、豆のスナック、揚げ物の衣にも豆のペーストを使ったりする。また、豆と並んでよく摂取するものが乳製品だ。チャイに牛乳を使うほか、ミルク菓子もたいへん多い。また、カレーを食べるときにはヨーグルトを添えるのが一般的だ。パニールというチーズを作り、カレーに混ぜたりもする。まあ、これだけ食べれば問題はないだろう。

インドのベジタリアン人口はやはり減っているのだろうか?インドといえども、現在は西洋的な習慣や文化の影響を受けないわけにはいかないだろう。でも、10年この国を旅行してきて、特にノンベジ人口が増えたとか、あるいは酒が飲まれるようになったとかといった印象はあまりない。インドのマクドナルドでは今もベジタブルバーガーが大きなシェアーを持っている。この国では金持ち、あるいはハイカーストの人間ほど肉食を恥じる傾向が強いから、にわか金持ちが増えた昨今のインドでは、逆に菜食がブランドなる傾向もあるのかどうか?

それにしても、世界のベジタリアンのほとんどがインド人であることは間違いない。何しろ、少なく見積もっても3億から4億のピュアーベジタリアンがいるわけだ。彼らが今後、肉食になる可能性もあまりないだろう。なんとも変わった国だが、この国を長く旅してきた人間としては、それも特別には思えなくなっている。(ちなみに、僕は今日からでもベジタリアンになる自信はある。でも、日本でそれをやったら誰とも付き合えないからなあ…)


(ベジタリアンの歴史について)
昔は、ヒンドゥー教徒も肉をいっぱい食べていたらしい。もともと遊牧民族のアーリア系はもちろん、インド先住民系も多くが神様に生贄をささげる習慣があり、その残り肉を食べていたことは間違いない。いつから菜食に転じたのかは分からない。ただ、インド思想の発展に従い、輪廻思想が一般化した。つまり、この世で悪い行いをした人間はあの世で犬になる、といった類のものだ。とすれば、これから食べようとしている牛は、自分のお父さんかお母さん、あるいはおじいさんかおばあさんかもしれない。じゃあ、食べるのはよそう、というわけだ。






サドゥ 小さなシヴァたち

インドの放浪修行者
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