ツーリストレストランの次はツーリストバスをこき下ろすとするかな…。という訳で、インドのバス事情について少し書いてみよう。
日本の9倍もあるインドでは、移動はいつも一仕事になってしまう。バスで3時間、あるいは4時間で済むならなんということもない。7時間となると、ちょっと気が重くなり、10時間を越えると諦めの境地にいたる。これが夜行列車ならかまわない。僕の場合、写真機材の安全を考え、最近はちょっといいクラス(2nd
AC)に乗るので、シートさえ確保してしまえば、あとはゆっくりと時間をすごせる。その頃、二等寝台では、インド人とバックパッカーたちとで熾烈な席取り合戦でもしているかも知れないが、ま、僕には関係のない話である(笑)。
しかし、いつも列車というわけにはいかないのがインドだ。路線がない区間も多いし、時間があわなければ寝台は利用できない。それに、駅でチケットを買う労力を考えると億劫だ。その点、本数の多いバスはとても便利だ。チケットもバスのなかで買えてしまう。という訳で、実際は、旅のほとんどはバスでの移動となってしまう。
列車では優雅に高いクラスを使っていたのだが、バスとなると、僕は突然ローカルバス派に変貌する。今にも壊れそうなぼろぼろのローカルバスである。実際に、途中で壊れることもあるが、それでもローカルバスを使い続ける。
これがインドのローカルバス。いかにも風通しがよさそうだ。
インドには、ローカルバスとは別に、ツーリストバス(プライベートバスとも呼ばれる)と呼ばれる、いわゆるバス会社が経営するバスも存在する。夜行なら、一応リクライニングシートがついていて、目的地までまっすぐ走るのはいいが、僕はあまり使うことがない。理由はいろいろある。
まず、リクライニングシートが好きではない。それに、比較的辺鄙な場所を訪れるので、ツーリストバス自体が使えない。しかし、僕がツーリストバスを使わない主要な理由はほかにある。まず、ツーリストバスの乗客の問題だ。この手のバスに乗るインド人客の多くがでっぷりと太った男たちであり、非常に窮屈だ。しかも、彼らは、何を誇示したいのか、あるいは蒸れているのか、やたら股を広げたがる。それに体臭も強いし、うるさく話しかける輩も多い。ある女性に聞いた話では、こういうバスにかぎって痴漢が多く出現するらしい。
バス会社自体に問題がある場合もある。空席があると出発時間が来ても走り出さない、あまりに少ないときは小さなワゴンに切り替えぎゅうぎゅう詰めにされる、客引きと手を組み町の手前で下ろそうとする、いい席を取ったはずなのに、オーバーブッキングでうしろの席に変えてくれと言われる、などなど、ムカつくことのオンパレードだ。
これに比べ、ローカルバスはまだ快適だ。シートは意外と広々としている。席の下の空間も広いので、大きな荷物も軽々と車内に持ち込める。人々は、まあ例外はあるが、一般的につつましく謙虚である。埃っぽいせいか、一部の地域をのぞけば体臭も感じたことはない。骨ばった、ターバンを巻いたおじいちゃんと一緒に、ヒンディーポップの流れる車内で過ごすのは悪くない。窓ガラスとかも壊れていてなかったりするので、気持ちのいい風が車内を吹き抜ける。素朴なドライブインでお茶を飲み、タバコを吸うと、実に幸せな気分になる(タバコは止めたが…)。
それにしても、インドという国は金の使い方が難しい。旅行中は、いつもインドから試されているような気分が付きまとう。バスに関しても、本当のところ、どれがいいかは分からない。ある程度の経験と勘は必要だが、あとは運次第ということか…。
(補記)
ローカルバスを使うなら、朝一番、5時とか6時にバススタンドに行き、乗ってしまうのがいい。朝一番というのは、意外と便数も多く、その割に空いている。また、風が涼しく、快適に旅できる(防寒には注意が必要だ)。5.6時間の距離だったら、昼過ぎには到着して、夕方はゆっくり観光できるだろう。
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