chaichai > フォトエッセイ > カルカッタのネズミ穴

ホーム

フォトギャラリー

写真で見るインド

インド旅の雑学

フォトエッセイ

ブログ

プロフィール

ネズミ穴から見たインド世界

カルカッタのネズミ穴

フォトエッセイ メニュー


カルカッタ公園のとある一角にお気に入りの場所がある。それがどこであるのかはとくに書かない。最近は何年かブランクがあるので、はたしてそこが変わらずにあるかどうかも分からないし、また、そんなところはカルカッタのいたるところにあると思うからだ。

そのお気に入りの場所は、遠目には何の変哲もない場所なので、近づかないかぎりはそれが何であるのかは分からない。ただ、ときどき何人かのインド人が柵越しに何かを眺めているので、何だろう、と思う人もいるかもしれない。しかしその程度のことはインドにはいくらでもあるので、特に気になることはないだろう。僕がそれに気付いたのもまったくの偶然だった。


リスの写真しかありません…

公園の一角にあったのは、たくさんのネズミの穴であった。数えてはいないが、ざっと見たところは50個ほど、そして穴からは絶えず数十匹の巨大なドブネズミが出入りしているのだ。驚いて眺めている僕の隣には、乞食すれすれの数人の男たちがだらしのない表情を浮かべて呆然とそのネズミたちを眺めている。彼らの手にはパン切れが握られていて、ときどき思い出したようにそれを投げ与える。一体何を考えて餌を与えているのか、と観察していると、その顔にふと笑いの表情をうかぶ。なにやら不気味な光景でもあるが、まあ見ようによっては少しかわいくもある。そして僕もまた、少しづつ気持ちがほぐれていくのを感じていた。それからは、思い出すたびにここを訪れるようになり、気がつくと、ネズミ穴を見るためにここへ立ち寄るのが毎日の楽しみになっていた。

その後、何年か連続してカルカッタを訪れたが、ネズミの穴は健在だった。ただ、少しづつ規模が小さくなっているように見えたのは、やはり不衛生だから、ということで、誰かが処分しようとした痕跡なのか。もしそうだとしたら、ずいぶんといい加減なやり方だなあと、僕は半分くらいの規模になったネズミの穴を眺めながら考えた。そういえば、なんとなくネズミの数も減ったようでもある。ただ、それに反して、見物人の数はわずかづつ増えていくような気もする。ときには家族連れが場違いな歓声をあげて騒いだりするのだが、さて、今はどうなっていることやら?



犬の写真しかありません…

パトナーという町の中級レストランではモグラを発見したことがある。インドの中級レストランにありがちな暗い照明の中だったので、最初はネズミかと思って目を凝らして見ていたが、どうも動きがおかしい。これは病気のネズミに違いないと結論付けようとしていたところへインド人(当たり前だが…)のウエイターがやってきて、これはネズミじゃないな、と断言した。僕はそのときになって、初めてこれがモグラであることに気がついた。その後、ほかのウエイターが入れ替わり立ち替わりモグラの顔をのぞきにやってきたが、誰もモグラをどうこうしようとしない。最後にマネージャーがやってきて、「Are you OK?」と訊くから大丈夫だと答えると、笑ってどこかにいってしまった。その後モグラがどうなったかは分からないが、おそらくそのまま放置したのだろう。もちろん高級レストランならそうもいかなかったと思うが。ま、これが気になるようではインドではやっていけない。



クリシュナ神の聖地ブリダーヴァンについては、「インド動物事情」にすでに書いた。とにかく動物が多いが、特に猿が多い。当然、多くの問題が発生するが、猿は神に近い存在なので誰も手出しが出来ない。これでは人間と動物の逆転現象だなあ、と通りを眺めていると、またもや巡礼が喜々としながら猿に餌を与えている真っ最中である。多分、一部の住民はこうした現状を苦々しい思いで見ているのかもしれないが、インドでは他人の行動に口を挟む習慣がほとんどないので、やはりほったらかしである。 だいたい、猿が人間より偉くない理由もないので、出て行くなら人間だろうが、と猿は思っているかもしれない。


動物をテーマとした話は、「インド動物事情」「動物と神様とインド人」につづいて三度目である。僕はこの手の話が大好きなのだが、そのわりに動物の写真をあまり撮っていないのは不覚であった。ま、それは今後の課題にするとしよう。

なお、動物とインド人の不思議な関係については「動物と神様とインド人」ですでに書いたとおりである。インドでは、基本的に一般人が野生動物に干渉するのはタブーである、とする暗黙の了解があるように思える。彼らに出来ることは、せいぜい動物たちに餌を与える程度のことであり、縄をつけて飼い慣らし、意のままに扱うために調教するといった行為はあまり見られない。だからインドにおける両者の関係は良くも悪くも緊張感がない。だらだらとした平和な時間がそこに流れている。(2005年春)







サドゥ 小さなシヴァたち

インドの放浪修行者
サドゥの本へのリンクです。
ご覧ください。






インド、ネパールなど南アジアの写真chaichaiへ



(C)shibata tetsuyuki since2007 All rights reserved.
全ての写真とテキストの著作権は柴田徹之に帰属しています。
許可なく使用および転載することは禁止です。ご留意ください。