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インドでインド人より怖いのが犬である。職業上(一応写真です)、頻繁に路地裏や村などを歩くが、そのたびに野良犬たちに吠えられ怖い思いをする。特にカメラが犬を刺激するらしい。シャッターの音はもっと良くない。大きなカメラバックも彼らに不信感を抱かせる。インドの犬はいつもインド人にいじめられ、普段はからきし根性がないくせに、異邦人を見ると普段の怒りを晴らすべく突然いきり立つ。

インドで怖いのは犬だけではない。猿に襲われかけたこともある。ホテルの屋上でみかんを入れた袋を猿に奪い取られ、腹いせに棒で追い掛け回したらなんとボス猿が現れた。歯をむき出しにしたその迫力はすごかった。急いで階段を駆け下りたが、ボス猿はどこまでも追いかけてくる。間一髪で無事だったが冷や汗が出た。

昼寝から目覚めると部屋の中で猿がバナナを食っていた、という体験も何度かある。また襲われるのもなんだから、にっこり笑って起きたよ、と合図してやると、猿もいやそうな顔をしながらも出て行ってくれる。

牛も危険だ。ヴァラナシでは狂ったウシが露天商に突っ込むのを何度か見たことがある。路上で闘牛をやっている牛もたまに見る。ウシよりも怒りっぽいのが水牛だ。写真を撮っていると、後ろ足で砂を蹴り上げながら睨みつける。

インドはどこに行っても動物がいるが、特にヴリダーヴァンという街が多い。デリーからバスで約3時間。街は迷路のような路地がひしめく魅力的なところで、寺が三千もあるのだという。有名な寺もいくつかあるが、路地に入る前に用心したほうがいい。まず、メガネをはずす、それからカメラをぶら下げて歩かない、紙袋は厳禁、小さなショルダーバックに貴重品を入れるのも止めたほうがいい。

ヴリダーヴァンは猿に支配された街なのだ。一部の有名寺院は完全に猿の住処と化し、近づくのも恐ろしい。店は猿除けの鉄格子の向こうにある。まるで動物園の猿のようだ。時折人間の悲鳴が町に響く。猿に奪い取られたのは男の手帳か何かのようだが、猿は電柱の上でそれをびりびりに破り捨てて遊んでいる。猿はインドでは神様扱いなので、棒で追い払う程度ならともかく本気で攻撃するわけにもいかない。まるで「お犬様」扱いだ。

インドでは、人間の地位は一部の動物よりも低いのかもしれない。警官は下層の人間を平気で殴りつけるが(一部の地域です)、牛や猿には手を出さない。猿は猿神ハヌマーンの眷属であり、牛はシヴァの従者ナンディーであり、コブラは蛇神ナーガであり、ゾウはシヴァの息子ガネーシャであり、ネズミはそのガネーシャの乗り物でもある。ネズミを駆除するのは問題ないと思うが、インドのある街にはネズミ寺があり、そこでは何千匹のネズミが大切に飼われている。境内はもちろんネズミだらけで歩くたびに微妙な感触が足に触れる。

インドにも一方で偉くない動物がいる。一つは食料にもなる山羊。一部の地域では、神様への生贄にも使用される。ただし、山羊は食べるくらいだからまだ不浄ではない。動物界最大のアンタッチャブルは犬だ。ともかく虐げられる。あまりに虐げられたので、インドで犬といえば、がりがりに痩せ衰え、皮膚病に冒されたまるで亡者のような姿がまず頭に浮かぶ。豚も不浄だが、豚は犬のように人間に媚を売らない。犬は嫌われても嫌われても媚を売り続ける。それがまたインド人に嫌われ、馬鹿にされる理由だ。そして悪いことに、犬たちはインド人に苛められた鬱憤をときに外人に向けようとするので、いつしか僕の頭の中でも彼らに対する同情が急激に薄れつつあるのは困ったことだ。(2004年秋)







サドゥ 小さなシヴァたち

インドの放浪修行者
サドゥの本へのリンクです。
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