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ビムベトカ(太古の壁画群)
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インド中央部の森の中に太古の壁画が眠っている。
ビムベトカ。インド最古級の遺産である。年代ははっきりしていない。一般的には一万年前、あるいはそれ以上に古いとされているが、実際、壁画の年代を計るのは非常に難しいとされている。それにビムベトカにはさまざまなタイプの壁画があり、それらが同じ年代のものという保障はない(2003年世界文化遺産指定)。
ビムベトカは非常に多くの壁画が集中していることで注目されたが、本当のことを言えば、こうした壁画はインドに無数にある。発見されているだけでも100を超えるのではないだろうか。ビムベトカよりさらに東側、ベンガル湾にいたるジャングルに眠る壁画群を想像すると、気が遠くなる思いがする。
私がこうした壁画群を見るのはビムベトカが最初ではない。ビムベトカよりさらに南のパチマリ(「デカン高原太古の森パチマリ」に一部公開)という場所で10個以上の洞窟壁画を見てきた。個人的な感想だが、壁画自体の芸術的価値としては、パチマリのほうが少し上と見る。
以下、ビムベトカの壁画を紹介していく。 |
(上の写真)おびただしい動物たちの群れが描かれている。動物たち、および狩猟の場面が壁画の大きなテーマになっているのは世界共通である。
(下の写真)こちらは狩猟ではなく戦いをテーマにしたもの。人間の体形や動きが表現豊かにに描かれている。馬が描かれているが、こうしたジャングルを舞台にして、馬をどのように乗りこなしていたのか、興味あるところだ。というのは、馬はもともと、インド先住民のものではないだろう、という一部学者の認識があり、それが中央アジアからのアーリア族進入説の根拠の一つとなっているからだ。ちなみに、アーリア族進入説は、とくにインド人学者を中心に疑問が投げかけられている(はっきり言ってしまえば、アーリア族云々は西洋人のでっち上げとではないか、という意思表明である。私もそう思う)。 |
(上の写真)毛虫とサソリが合体したような生物が描かれている。しかし、その大きさは、下に描かれた哺乳類らしき動物たちを凌駕している。こんなに大きなサソリがいたら、かなり怖い。 |
(上の写真)自然の要塞であるビムベトカはおそらくはるか昔の時代より、多くの人間たちに愛されてきた場所だったと想像できる。岩に登れば、眼下に平原の様子を一望でき、オーバーハングした岩の下が居心地のよい住処となった。
(下の写真)ビムベトカ最大の壁画。巨大なバイソンに追いかけられる人間である。それにしてもバイソンの姿が大きい。原始人だから、どうせ誇張して書いたんだろう、と思われるかもしれないが、たぶん違う。おそらく、これほどの大きさであったかどうかは定かではないにしろ、巨大なバイソンは存在していた。これはすでに科学の分野でも証明されつつある。恐竜やマンモスの例を見れば一目瞭然だが、多くの野生の動物はここ数千年間で小型化してしまった。昔は、カリスマ性あふれる動物というのが、どの地域でも数多くいたのだ。 |
(上の写真)馬にまたがった軍人が槍を投げようとしている。絵のテーマもそうであるが、描写が硬い。おそらく歴史時代の壁画であろう。3000年から4000年、あるいはもっと新しい可能性もある。
(下の写真)壁画上方の大きな男は両手でドラムを叩いている。その下の7人の人々は手を握り合って踊っている。壁画自体は稚拙であり、新しいのか古いのか、まったく分からない。 |
(上の写真)赤の絵の具がビムベトカの特色である。パチマリではほとんど見られなかった。絵はおもしろいが、まるで抽象画のように簡略されている。絵のモチーフから想像するに、これも歴史時代だろうか。右手には、蛇のような長い動物が描かれている。
(下の写真)ゾウにまたがった兵士だろうか。絵自体の魅力はあまりないが、モチーフはおもしろい。ゾウを使って戦うのは古代インドからの風習である。そのルーツであろうか。 |
(上の写真)戦う二人の男。右の男は一方の手に楯を持っている。もう片一方の手に持っているのは棍棒だろうか。
太古の壁画は個人的に非常に興味あるものなので、少し詳しく解説してみた。パチマリについてもぜひご覧いただきたい。なお、ビムベトカへはマディヤプラデシュの州都ボパールからの日帰り往復が便利だ。バスでも途中までは行けるが、その後、乗り換えなどが面倒だ。タクシーかオートリクシャをチャーターするのが無難。ボパールは仏教遺跡サンチーへの基点となる町である。サンチーに来るならぜひビムベトカも訪れてみたい。 |
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