インド南部カルナータカ州の平原地帯に突如現れる岩山と、その頂上部に立つ奇妙な彫像を見るためだけにこの辺鄙な街を訪れた。
街の名はシュラヴァナベルゴーラ、そこはジャイナ教の聖地である。
丘の上に建つ裸像はジャイナ教の聖人ゴーマテーシュワラ(街の名も聖人の名もややこしい…)、といってもたくさんいるジャイナ教の聖人の名前を聞いたところで混乱するだけ。ジャイナ教の聖人はヒンドゥー教のようには個性的ではないばかりではなく、場合によってはみんな裸であったりするからなおさら個々の聖人など覚えられない。そしてシュラヴァナベルゴーラの丘に立つ聖人もまた素っ裸である。
ジャイナ教についてはあまり詳しくないのでごく簡単に…。
現世での欲望を否定し、所有することを一切断ち切った宗教なのだが、その極端な思想はちょっとなじみにくい。極端な菜食主義でもあり、ニンニクも玉ねぎも食べない。微細な虫を殺さないため、いつも箒を持って、地面を掃きながら歩いたり、水をフィルターで漉したりするらしい。だからシュラヴァナベルゴーラの宿でゴキブリが出たときは参ってしまった。さすがに殺すわけにもいかない。
なんだかんだ不便な場所だが、それでもシュラヴァナベルゴーラは一見の価値があるだろう。その裸像はなんと一千年以上も昔に建てられたもので、よくもまあ、倒れずにいれたものだと感心してしまう。丘の周囲を歩くのも楽しい。街をはさんだ向かい側にも丘があるので、夕暮れはここで過ごすのもいいだろう。
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